ニワカ映画研究所

映画鑑賞にはまり始めてはや数年、、日々鑑賞した映画をニワカ知識なりにレビューしていくブログです。公開中のものから過去作も!面白い映画を探す参考にしてください。

【歴史の分岐点】ワンスアポンアタイムインハリウッド/ONCE UPON A TIME IN HOLLYWOOD ~予習編~

🎥ワンスアポンアタイムインハリウッド

 

皆さまいかがお過ごしでしょうか。

ニワカ映画研究所所長です。

 

今回取り上げる作品は

『ワンスアポンアタイムインハリウッド』

です!

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今回は「レビュー」ではなく

映画を見る前にぜひ知って

おいていただきたい

予備知識について語っていきます。

 

 

なので記事タイトルは「予習編」としております。

 

なんだか偉そうなことを言って

おりますが、あくまで「ニワカ」知識ですので

悪しからず、、

 

 

1.監督

監督はクエンティン・タランティーノ

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超映画オタクの映画監督と

しても有名な彼。

 

これまで1991年の『レザボアドッグス』に

始まり

『パルプフィクション』(1994)

『ジャッキーブラウン』(1997)

『キルビルVOL.1 VOL.2』(2003、2004)

『デスプルーフ イン グラインドハウス』(2007)

『イングロリアス・バスターズ』(2009)

『ジャンゴ 繋がれざる者』(2012)

『ヘイトフルエイト』(2015)

 

といった作品を残しています。

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私は現在20代なかばなのですが

同じく20代の方は

 

『キルビル』や『ジャンゴ』、

『イングロリアス・バスターズ』

 

は映画にアンテナを張って

いない人でも聞いたことが

あるのではないでしょうか。

 

 

今作、『ワンスアポンアタイム~』は

『ジャンゴ』、『イングロリアス・バスターズ』と

合わせて「タランティーノ三部作

 

と言われるほど、タランティーノの

根底にある思想やバックボーン、

社会や歴史に対するメッセージ

表面に現れている作品だそうです。

 

 

実は私まだまだタランティーノ作品については

未観賞のものが多く、

この記事を書き次第鑑賞してまいります。笑

 

 

そして今作では、タランティーノの原風景的

時代である1960年代後半~70年代初頭

ハリウッドを舞台とした作品となっております。

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当時、タランティーノは

十歳にも満たない少年でしたが

 

そのころにみた風景やファッション、

テレビ番組や車といったものから

 

車から流れていたラジオに至るまで

この時代の空気感がとても繊細に

再現されているようです。

 

 

この時代を経験していない20代の

わたしですら、何故だか

「懐かしいなぁ」と思えてしまうほどです。

 

 

それはこの作品の基となる「殺人事件」という

変えようのない歴史的事実

否応なくこの作品が向かって行ってしまう

 

という「ノスタルジックさ」も

後押ししてそのように感じるのかも

しれません。

 

 

こういった感情を想起させる作品を

完成させているだけでも

クエンティン・タランティーノの

監督としての力量がうかがえますね。

 

 

2、キャスト、キャラ解説

 

今作はブラッドピット

レオナルドディカプリオW主演

 

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ディカプリオは落ち目のハリウッドスター、

リック・ダルトンを。

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ブラッドピットはこのリックの

専属スタントマン(スタントダブル)である

クリフ・ブースを演じます。

 

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リック(ディカプリオ)は

ワイルドな見た目に反して

 

かなり女々しくて

自己肯定感の低い

ダメダメなやつ

          なんです。笑

 

夜な夜な覚えたはずのセリフも

現場では飛ばしまくり。

 

控室では自分の不甲斐無さと

自分への怒りを喚き散らし

 

「何が、何がリックダルトンだ!」

 

とメソメソ泣きながら喚いたり

するんですよね。

 

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ダメな奴なんですが

なんだかその内面の弱さ

とても愛らしい

キュートなキャラクター

なっています。

 

 

その相棒、スタントダブルがクリフ(ブラッドピット)。

 

※当時はCG技術が無いため

危険なアクション等は背丈や

顔が似ている人が専属スタントマン

所謂スタントダブルとして

代わりにアクションを行っていました。

 

クリフはリックとは対照的で

ワイルドな見た目に

ワイルドな性格!笑

 

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クリフはリックの

専属スタントマンではあるものの

 

リックにとっての

専属運転手であり

専属雑用係であり

専属心理カウンセラーでもあります。

 

 

いつも落ち込んでばかりのリックの

肩を抱き、大きな懐で受け止める。

 

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そんな父性溢れる人物がクリフです。

 

 

元軍人であり、少々攻撃的な

一面もありますが、、。

 

リッククリフもとても

魅力的なキャラクターですが

 

実はこの二人は架空の人物なんです。

 

タランティーノ曰はく、それぞれ

基となった実際の人物はいるそうなのですが。

これは是非公式パンフレットで

ご確認ください。

 

 

 

次に、この作品のキーとなるのが

マーゴット・ロビー演じる

シャロン・テートです。

 

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シャロン・テートは実在の人物であり

今作の基となる事件に

巻き込まれた被害者の一人です。

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その事件については後述で

詳しく書いていきます。

 

 

シャロンは今を時めく

ハリウッドスター。

 

 

同じく人気の若手映画監督、

ロマンポランスキーと夫婦であり、

作中では、落ち目のリックの

隣家に引っ越してきます。

 

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シャロン(マーゴット)自身は、とても純真

ハッピーなオーラを纏った人物です。

 

 

休日には夫へのプレゼントの本を

買いに出かけ、

 

自身の出演する映画が

公開されているシアターに

足を運び、

 

観客の反応を

ドキドキしながら聞いたりする。

 

時にはパーティーに行き、

仲間と踊りあかす。

 

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映画で描かれる、そんな彼女の日常が

「事件の被害者」ではなく

 

一人の、日々を楽しく生きる

普通の人間なんだ、ということに気づかせてくれます。

 

 

他にも魅力的な俳優陣が

名を連ねています。

 

ヒッピー集団の一員として

ダコタ・ファニングやマーガレット・クアリー。

 

ブルース・リー役としてマイク・モー。

マーヴィン・シュワーズ役として

アル・パチーノがキャスティングされている。

 

他には

ティモシー・オリファント

故ルーク・ペリーetc,,

 

個人的には

ブラピとブルースリーのアクション

シーンは胸が熱くなりました。笑

 

『ファイトクラブ』で

ブラピがマネにマネした

ブルースリー。

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遂に本家との決戦です。笑

 

 

 

3.基となった「事件」とは

 

今作は1969年8月9日、シャロンテートを含む

数名が、シャロンテートの自宅で

 

見るも無残な姿で惨殺された、という

実際の事件を基にしています。

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その犯人はスクィーキー・フロムを

含むヒッピー約3名の仕業でした。

 

 

この事件はハリウッド史に

多大な影響を与え、

そして歴史的にも大きな

転換を迎えるきっかけとなりました。

 

4.そもそもヒッピーって何?

 

ロック史に明るい人はご存知かもしれませんが

ヒッピーとは

 

1960年代後半にアメリカで発生した

欧米の伝統や制度など、

それまで主流であった

価値観を否定する

形で生まれた、所謂

 

カウンターカルチャー」です。

 

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この背景には1945年前後、欧米での

ベビーブームがあります。

 

この世代が成長し

人口の、彼らの世代が占める割合が増え

これまでの伝統や価値観に疑問を唱える

者たちが増えていきました。

 

 

ヒッピーたちが否定したのは

保守的なキリスト教文明です。

 

 

彼らはインドなどの東洋の宗教

哲学をベースに、

 

反体制思想、左翼思想、

自然の中での「共同体生活」への

回帰を提案しました。

 

そこから価値観の多様な社会を目指し

 

性解放、男女平等、フリーセックス、

人種差別の撤廃、大麻などのドラッグ解禁、

 

ヴィーガニズム(完全菜食主義)といった

思想やムーブメントが生まれていきます。

 

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ロックもこれに後押しされる形で

野外フェスなどを通じ広がっていきます。

 

 

「ウッドストック」はその象徴的フェスであり

 

ビートルズ、ローリングストーンズ、

ジミヘンドリックスといったアーティストが出演し

 

ヒッピーたちは音楽とともに

酒を飲み、ドラッグを服用し

自然の中でフリーなラブを形成していきました。

 

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ウッドストックはそこらじゅうで

ドラッグやったり、

セックスしていたりと

 

今の価値観で見ると

恐ろしく滅茶苦茶なフェスだった

という話もあります。

 

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ビートルズに詳しい人はわかるかもしれませんが

1960年代後半に製作された楽曲は

 

明らかに東洋文化、宗教に感化されたものや

サイケドラッギーなものが増えていきます。

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こんな「ヒッピー」という

一大ムーヴメントが生み出し

今も残る言葉として

 

「ラブアンドピース」

 

というものがあります。

 

※反戦運動、フラワームーブメント等

も語るべきではあると思いますが

キリが無いのでここでは割愛します。

 

 

それにはこういった背景が

含まれているのです。

 

5.シャロンテートを殺すに至るまで、それから

 

実際のこの事件の首謀者は

「チャールズ・マンソン」という人物です。

 

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彼は「ヒッピー」の若者を集め

独自のコミュニティを作り

生活を営んでいました。

 

彼はヒッピー的思想と

ハルマゲドン思想をもとに

そしてLSDやマリファナで洗脳し

 

新たな宗教団体を形成していたのです。

 

 

彼には、常人には理解できない

カリスマ性リーダー的気質

そしてヒッピー的でない

過激な思考(ハルマゲドン思想)

を持つ人物でした。

 

※ハルマゲドンについては私自身

 あまり理解できていないので

 ここでの説明は割愛しますね。 

 

 

彼はギターで作曲をすることもできました。

夢はビートルズよりも偉大な

ミュージシャンになること。

 

 

ある時ザ・バーズのプロデューサーと

知り合いますが、チャールズはあしらわれるように

レコード制作を拒否されてしまいました。

 

 

そこからチャールズの復讐劇が始まります。

 

 

チャールズはそのプロデューサーの家を

訪れたことがあり、

場所を知っていたため

そこに信者のヒッピーたちを送り込み

 

一家全員を殺す計画を立てました。

 

 

そしてチャールズはこの事件を

黒人による無差別殺人とすることで

 

自身が信じる「人種間の最終戦争」を

加速させることを狙いとしていました。

 

 

また、資本主義物質主義の象徴的な

ハリウッドに住む人を殺すことは

 

彼らなりの反体制の表現だったのでは、

と思われます。

 

 

しかしその家は既に、そのプロデューサーではなく

ポランスキー、シャロンテート夫妻が買い取り

住んでいたのです。

 

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信者に課された使命は

「指定された家屋にいる

住人を皆殺しにすること」

 

 

もう信者にはそこにだれが住んでいるか

なんてことは関係ありませんでした。

 

 

ポランスキーは仕事で外出しており

家にはシャロンテート他友人の数名。

 

いずれもそれぞれの分野での

有名人やセレブでありました。

 

 

その全員が無残に殺され

 

妊娠していたシャロンテートの

腹部には無数の刺し傷が。

 

そして壁には

 

 

Pig

 

豚ども、という捨てセリフが

シャロンの血で書き殴られていました。

 

 

この事件は世界を震撼さました。

 

しかし真犯人を突き止められることはなく

様々な憶測が飛び交うこととなります。

 

 

事件は迷宮入りか。

 

 

そう思われた矢先、別件で

逮捕された犯人のヒッピーのうちの

ひとり(スクゥイーキー・フロム)

が、同房の囚人に

 

 

「シャロンテートを殺したのは私だ」

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と言っていたことがわかり

事態は急転しました。

 

 

そこから次々に明らかになる

事件の真相。

 

 

「ラブアンドピース」を掲げる

ヒッピー達による犯行だったため、

 

同じヒッピー達からも批判の

声が上がり、ヒッピームーヴメントは

 

急速に終息していくこととなったのです。

 

 

ハリウッドの黄金期の終息、

そしてヒッピームーヴメントの終息が

歴史の転換点になったことは言うまでもありません。

 

6.当時(1960後半~70年代初頭)のハリウッド

 

1960年代のハリウッドは、ヒッピーカルチャーに始まる

時代の流れに取り残されつつありました。

 

実際どこの映画会社も経営難に陥り

「古き良きアメリカ」なんて呼べる状態

ではなかったそうです。

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また、ハリウッド映画は撮影所ですべて

撮る、というスタイルで

 

さらに自主倫理規制コードにより

暴力的、反体制的表現、婚前恋愛や

裸、濡れ場

 

といったことを

表現することを禁止していました。

 

新進気鋭の映画監督たちは

このリアルでないハリウッドの

映画的表現ではなく

 

よりリアルで、過激な表現をするように

なっていきます。

 

 

銃の打ち合いをしても一滴の血も

流れない西部劇、ハリウッド映画よりも

 

 

リアルさを追求した銃撃戦、

人種差別の闇や

自国の経済格差をテーマとした

映画がヒットするようになりました。

 

 

ハリウッドもこれに習い

1968年にこの倫理コードを撤廃

リアルな映画を撮るようになり

 

「アメリカンニューシネマ」という

映画運動のきっかけとなりました。

 

 

当時、この新進気鋭の監督たちは

多くがヨーロッパから進出しており、

 

落ち目でもネームバリューのある

ハリウッドスター

をキャスティングする

ことが多々ありました。

↓当時落ち目だった

    クリントイーストウッド

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今作『ワンスアポンアタイム~』でも

主人公リックが正にそのような立ち位置にあります。

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食いつなぐために

落ち目のスターはヨーロッパに

出稼ぎに行っていたのです。

 

 

更に、ハリウッドが落ちぶれていた

原因はもう一つあり、

それは「高齢化」でした。

 

そこでジョージルーカスやスピルバーグといった

若手監督を起用するように

なっていき、今のハリウッドが

あるようです。

 

↓ジョーズに乗るスピルバーグ

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7.最後に

ここで予習編は以上と

させていただきます!

 

情報量は多めですが、最終的に

 

「こんな事件があったんやな~」

くらいの

感覚で鑑賞してもらって

全然大丈夫です。笑

 

ただ、予備知識があると

より面白いことは間違いないので

 

最後まで読んでいただいた方は

面白さは知らない人の倍以上

あることは間違いありません!!

 

 

現在絶賛公開中です。

 

お時間ある方は是非、、