ニワカ映画研究所

映画鑑賞にはまり始めてはや数年、、日々鑑賞した映画をニワカ知識なりにレビューしていくブログです。公開中のものから過去作も!面白い映画を探す参考にしてください。

【貴方のすぐ傍でも】ツレがうつになりまして

🎥ツレがうつになりまして

 


皆さんいかがお過ごしでしょうか。

ニワカ映画研究所所長です。

 


今回取り上げる作品は

『ツレがうつになりまして』です!

 

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テーマは一見重そうですが

ほっこりとした雰囲気

かつ鬱病について

しっかり描かれている

 

とても良い作品です。

 


今回のレビューは私自身の

実体験に基づく内容も含みますので

少々胃もたれするかもしれません…

 

 

 

それではご覧下さい👇

 

 

 

1.監督

 


監督は佐々部清

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2002年『陽はまた昇る』

で映画デビュー。

 


以降、

2003年『チルソクの夏』

2004年『半落ち』

2006年『カーテンコール』

2007年『夕凪の街桜の国』

などを監督。

 


そして

2011年『ツレがうつになりまして』

を製作。

 


現在は映画製作会社を

設立、運営しているそうです。

 


2.キャスト

 


主演は宮崎あおい

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流石に宮崎あおいは

皆さんご存知ですね。

 

 

 

前にレビューした『舟を編む』や

『NANA』、『少年メリケンサック』

『篤姫』etc…

 

 

 

ドラマや映画に多数出演

されている

実力派人気女優さんです。

 

 

niwaka-eiga-labo.hatenablog.com

 


日本アカデミー賞優秀主演女優賞

を、今作を含む4作品で受賞

 

他多数の受賞暦のある

凄い方なんですよね。

 

 

 

それだけあってその演技力は

超一級品です。

 


作品によって彼女の演じる

キャラクターは

なんというか『』が

がらりと変わります。

 


今作では

 

少々だらしない

でも絵が大好きで

夫も大好きで

 

多くの事を偏見なく

考えることのできる。

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そんなステキな

女性を演じられます。

 

 

 

夫(ツレ)役は堺雅人が。

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ドラマでは

『半沢直樹』シリーズや

『リーガルハイ』シリーズで

お馴染みの俳優です。

 


『半沢直樹』の

「倍返しだ!」

流行語にもなるほど

社会現象にもなりましたね。

 

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映画では

『クライマーズハイ』

『ジェネラルルージュの凱旋』

『ゴールデンスランバー』

『南極料理人』

などなど…

多数の作品に出演しています。

 


『武士の家計簿』

『鍵泥棒のメゾット』

 

では日本アカデミー賞

優秀主演男優賞

受賞しており

他にも多数の受賞暦が。

 

 

 

この間違いない2人

タッグを組んだ作品が

この『ツレがうつになりまして』です。

 


他にも

吹越満、津田寛治、犬塚弘、梅沢富美男

田山涼成、大杉漣、余貴美子etc…

 


日本を代表する俳優達が

勢揃いです。

 


3.あらすじ

 


ハル(宮崎あおい)と

ツレ(堺雅人)は夫婦で

同棲中。

 

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ハルはマイナー雑誌で

連載を持つ漫画家

 


ツレはIT企業に勤め、クレーム対応を

主な仕事としながら

 


家事も仕事もバリバリに

こなす生真面目な夫でした。

 


しかし、激務と過労、ストレスが重なり

遂に鬱病を発祥してしまいます。

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もともとその兆候はありましたが

お互いそれに気付かず、

 


それが表面化した時には手遅れでした。

 

 

 

医者の診断によると

治療には半年〜1年半ほどかかる

とのことでしたが

 


収入面を考えると

仕事を簡単にやめることも出来ず

 


上司にその診断結果を伝えても

 

「忙しいし皆同じ様なものだ」

 

とあしらわれマトモに

取り合ってもらえません。

 

 

 

結局、妻ハルの後押しもあり

会社を辞め、

投薬に頼らない

自宅療養を始めます。

 

 

 

夫婦2人とも鬱病について

理解を深め

治療を進め

次第に症状は軽くなっていきます。

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しかし夫ツレが仕事を辞め

遂に失業保険も切れたため

まともな収入がありません

 


そこで妻ハルは

この自身の生活を基に

本を書くことを思いつくのでした。

 

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4..原作

 


この作品は、エッセイ漫画

『ツレがうつになりまして』

『その後のツレがうつになりまして』

『イグアナの嫁』

が原作となっています。

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売れない漫画家の妻(作者)と

元サラリーマンのツレが

共に送る闘病生活を描く。

 


自殺未遂、症状の改善、

悪化などあらゆる出来事を

 

決して固くない絵のタッチ

表現するという内容。

 


うつ病を「宇宙カゼ」と呼んだり

抑うつ状態の症状が現れている時に

憂鬱をキャッチするアンテナ

頭に現れているという

 

独特の描写などがあります。

 

 

 

この原作同様、映画も

扱うテーマとは裏腹に

 


ほっこりとした雰囲気の中で

日常が描かれています。

 


更に作者の方の鬱症状の

捉え方がキュートで、

内容で胃もたれしないような

作りになっています。

 


しかし、それは鬱病を軽視し

表面のみを見ているではなく

 


しっかりと鬱病を理解

夫を愛し、受け入れる作者の方の

姿勢があってこそのものです。

 


この原作本を出された理由として

収入面でのこともありますが、

 


世の中の鬱病に対する知識の乏しさ、

誤解の多さを実感し

 


鬱病のことをもっと広めたい、と

考えたから

 


というのもあるそうです。

 

この映画で興味を持たれた方は

是非一度この原作本を

手に取ることをオススメします。

 

 

 

5.感想

 


なんだかこの映画を見ていて

ツレが、まるで自分の内面

見ているかのようで

 

ザクりと胸に刺さりました。

 


いつも「死にたい」という

気持ちが胸の何処かにあり

 


他の人にとってはどうでも良い

様な事がトリガーになり

 


衝動的に行動を起こしてしまったり

 


逆に全くの無気力になったり。

 


これが意識的でなく勝手に頭と身体が

そうなり、どうしようにも

コントロールできずに苦しむ

 

 

 

私自身何度も同じ様な経験をしました。

 

 

 

自分は生きていても意味がない

自分は誰からも愛されない

迷惑かけてきてごめん

誰にも迷惑かけずに居なくなるには

どうしたらいいんだろう

 

 

 

何をしてても

誰と話し、笑いあってても

こんな事がグルグルと頭を

駆け巡る日々。

 

 

 

辛い日々でした。

 

 

 

ここから抜け出せたのは

 

まず然るべき機関、病院等に

相談すること。

自分で自分のことを

理解すること。

 


そして周囲の人や家族に

これを理解してもらうことでした。

 

 

 

最初は

 

「ただ甘えてるだけでしょ」

「落ち込むのが趣味」

「悲劇のヒロイン気取るな」

 

なんて言われてきました。

 


僕自身、自分は

病院で診断を受けるまでは

 


マトモに生活できず

社会に順応することすら出来ない

クズ野郎なんだ

 


と思い込んでいました。

 


しかしそれにはちゃんと

理由があったのです。

 

 

 

今作でもツレ(夫)が

 

「原因がわかって少し安心した」

 

と吐露するシーンがあるのですが、

 


私も全く同じ感情を抱きました。

 


形の無いナニカに対する不安が

形が見えるだけで

こんなにも安心するなんて。

 


そして形が見えたことで

漸くそれに対する対策も

できるようになるのです。

 

 

 


これを読む貴方の周りで

似たような状況に

なっている方がいれば

手を貸してあげて下さい。

 


貴方自身も私と同じような

状況に陥ってしまっているのなら

まずは原因を調べる事を

おススメします。

 


世の中には、似たような人は

沢山いて

そんな人達を助けてくれる機関も

沢山あります。

 


私は初めて自分の症状で

病院に行った時、

周りには

 


小学生くらいの子や

お年寄りの方、

 


主婦っぽい人

スーツを着たサラリーマン

墨の入ったいかついお兄さん

 


本当にいろんな人がいて

 


「あぁ、おんなじ事で

悩んでる人って多いんやな」

 

とここで初めて気づきました。

 

 

 

1人じゃない。

 

 

 

こんな自分を、私はずっと

恥ずかしくて情けないと

思ってきて

 


そんの自分を隠すことに

必死になってきましたが

 

 

 

そんな必要は全くありませんでした。

 

 

 

私は私のできる範囲で

ゆっくりと生きていこうと

思います。

 


自分自身を受け入れて

ありのままで生きる。

 


それで十分です。

 

 

 

これまであまりに

理想が高く

完璧主義

生きてきたように思います。

 

 

 

しかし僕は早い段階で

恐らく小学校高学年の頃から

この高い理想、完璧主義と

 


自分の現実との差

苦しんできました。

 

 

 

それが今、20代も半ばにして

漸くそこから

解放されつつあります。

 

 

 

俗に言う、「一般的」な

人生のレールからは

とっくに離れています。

 


そんな私をバカにする人は

周りを見渡せば沢山います。

 


ただ、こんな私を受け入れてくれる人も

沢山いるのです。

 

 

 

それで私は十分なのです。

 

 

 

 


なんだか映画の感想

というよりも

私の内面を晒しただけの

内容でしたが…笑

 

 

 

今は楽しく生きてますよー!笑笑

もちろん波はありますが!笑

 

 

 

 


というわけで、今回は以上です!

書いてて

「やっぱりこれ重たいな〜」

「胃もたれすんな〜」

と思いましたが

 


皆さん大丈夫だったでしょうか。笑

 


世の中こんな人もおるんやな〜

ってことと

 


意外と近くに似たような人はいるってこと

貴方自身もそうなる可能性はあるってこと

 


に気づいていただければ

 


この映画をみる意味、

このレビューを読んでいただく

意味が深まると思います。

 


お時間ある方は是非

『ツレがうつになりまして』

をご鑑賞してみて下さい。

 

ツレがうつになりまして。

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【歴史の分岐点】ワンスアポンアタイムインハリウッド/ONCE UPON A TIME IN HOLLYWOOD ~予習編~

🎥ワンスアポンアタイムインハリウッド

 

皆さまいかがお過ごしでしょうか。

ニワカ映画研究所所長です。

 

今回取り上げる作品は

『ワンスアポンアタイムインハリウッド』

です!

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今回は「レビュー」ではなく

映画を見る前にぜひ知って

おいていただきたい

予備知識について語っていきます。

 

 

なので記事タイトルは「予習編」としております。

 

なんだか偉そうなことを言って

おりますが、あくまで「ニワカ」知識ですので

悪しからず、、

 

 

1.監督

監督はクエンティン・タランティーノ

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超映画オタクの映画監督と

しても有名な彼。

 

これまで1991年の『レザボアドッグス』に

始まり

『パルプフィクション』(1994)

『ジャッキーブラウン』(1997)

『キルビルVOL.1 VOL.2』(2003、2004)

『デスプルーフ イン グラインドハウス』(2007)

『イングロリアス・バスターズ』(2009)

『ジャンゴ 繋がれざる者』(2012)

『ヘイトフルエイト』(2015)

 

といった作品を残しています。

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私は現在20代なかばなのですが

同じく20代の方は

 

『キルビル』や『ジャンゴ』、

『イングロリアス・バスターズ』

 

は映画にアンテナを張って

いない人でも聞いたことが

あるのではないでしょうか。

 

 

今作、『ワンスアポンアタイム~』は

『ジャンゴ』、『イングロリアス・バスターズ』と

合わせて「タランティーノ三部作

 

と言われるほど、タランティーノの

根底にある思想やバックボーン、

社会や歴史に対するメッセージ

表面に現れている作品だそうです。

 

 

実は私まだまだタランティーノ作品については

未観賞のものが多く、

この記事を書き次第鑑賞してまいります。笑

 

 

そして今作では、タランティーノの原風景的

時代である1960年代後半~70年代初頭

ハリウッドを舞台とした作品となっております。

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当時、タランティーノは

十歳にも満たない少年でしたが

 

そのころにみた風景やファッション、

テレビ番組や車といったものから

 

車から流れていたラジオに至るまで

この時代の空気感がとても繊細に

再現されているようです。

 

 

この時代を経験していない20代の

わたしですら、何故だか

「懐かしいなぁ」と思えてしまうほどです。

 

 

それはこの作品の基となる「殺人事件」という

変えようのない歴史的事実

否応なくこの作品が向かって行ってしまう

 

という「ノスタルジックさ」も

後押ししてそのように感じるのかも

しれません。

 

 

こういった感情を想起させる作品を

完成させているだけでも

クエンティン・タランティーノの

監督としての力量がうかがえますね。

 

 

2、キャスト、キャラ解説

 

今作はブラッドピット

レオナルドディカプリオW主演

 

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ディカプリオは落ち目のハリウッドスター、

リック・ダルトンを。

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ブラッドピットはこのリックの

専属スタントマン(スタントダブル)である

クリフ・ブースを演じます。

 

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リック(ディカプリオ)は

ワイルドな見た目に反して

 

かなり女々しくて

自己肯定感の低い

ダメダメなやつ

          なんです。笑

 

夜な夜な覚えたはずのセリフも

現場では飛ばしまくり。

 

控室では自分の不甲斐無さと

自分への怒りを喚き散らし

 

「何が、何がリックダルトンだ!」

 

とメソメソ泣きながら喚いたり

するんですよね。

 

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ダメな奴なんですが

なんだかその内面の弱さ

とても愛らしい

キュートなキャラクター

なっています。

 

 

その相棒、スタントダブルがクリフ(ブラッドピット)。

 

※当時はCG技術が無いため

危険なアクション等は背丈や

顔が似ている人が専属スタントマン

所謂スタントダブルとして

代わりにアクションを行っていました。

 

クリフはリックとは対照的で

ワイルドな見た目に

ワイルドな性格!笑

 

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クリフはリックの

専属スタントマンではあるものの

 

リックにとっての

専属運転手であり

専属雑用係であり

専属心理カウンセラーでもあります。

 

 

いつも落ち込んでばかりのリックの

肩を抱き、大きな懐で受け止める。

 

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そんな父性溢れる人物がクリフです。

 

 

元軍人であり、少々攻撃的な

一面もありますが、、。

 

リッククリフもとても

魅力的なキャラクターですが

 

実はこの二人は架空の人物なんです。

 

タランティーノ曰はく、それぞれ

基となった実際の人物はいるそうなのですが。

これは是非公式パンフレットで

ご確認ください。

 

 

 

次に、この作品のキーとなるのが

マーゴット・ロビー演じる

シャロン・テートです。

 

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シャロン・テートは実在の人物であり

今作の基となる事件に

巻き込まれた被害者の一人です。

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その事件については後述で

詳しく書いていきます。

 

 

シャロンは今を時めく

ハリウッドスター。

 

 

同じく人気の若手映画監督、

ロマンポランスキーと夫婦であり、

作中では、落ち目のリックの

隣家に引っ越してきます。

 

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シャロン(マーゴット)自身は、とても純真

ハッピーなオーラを纏った人物です。

 

 

休日には夫へのプレゼントの本を

買いに出かけ、

 

自身の出演する映画が

公開されているシアターに

足を運び、

 

観客の反応を

ドキドキしながら聞いたりする。

 

時にはパーティーに行き、

仲間と踊りあかす。

 

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映画で描かれる、そんな彼女の日常が

「事件の被害者」ではなく

 

一人の、日々を楽しく生きる

普通の人間なんだ、ということに気づかせてくれます。

 

 

他にも魅力的な俳優陣が

名を連ねています。

 

ヒッピー集団の一員として

ダコタ・ファニングやマーガレット・クアリー。

 

ブルース・リー役としてマイク・モー。

マーヴィン・シュワーズ役として

アル・パチーノがキャスティングされている。

 

他には

ティモシー・オリファント

故ルーク・ペリーetc,,

 

個人的には

ブラピとブルースリーのアクション

シーンは胸が熱くなりました。笑

 

『ファイトクラブ』で

ブラピがマネにマネした

ブルースリー。

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遂に本家との決戦です。笑

 

 

 

3.基となった「事件」とは

 

今作は1969年8月9日、シャロンテートを含む

数名が、シャロンテートの自宅で

 

見るも無残な姿で惨殺された、という

実際の事件を基にしています。

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その犯人はスクィーキー・フロムを

含むヒッピー約3名の仕業でした。

 

 

この事件はハリウッド史に

多大な影響を与え、

そして歴史的にも大きな

転換を迎えるきっかけとなりました。

 

4.そもそもヒッピーって何?

 

ロック史に明るい人はご存知かもしれませんが

ヒッピーとは

 

1960年代後半にアメリカで発生した

欧米の伝統や制度など、

それまで主流であった

価値観を否定する

形で生まれた、所謂

 

カウンターカルチャー」です。

 

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この背景には1945年前後、欧米での

ベビーブームがあります。

 

この世代が成長し

人口の、彼らの世代が占める割合が増え

これまでの伝統や価値観に疑問を唱える

者たちが増えていきました。

 

 

ヒッピーたちが否定したのは

保守的なキリスト教文明です。

 

 

彼らはインドなどの東洋の宗教

哲学をベースに、

 

反体制思想、左翼思想、

自然の中での「共同体生活」への

回帰を提案しました。

 

そこから価値観の多様な社会を目指し

 

性解放、男女平等、フリーセックス、

人種差別の撤廃、大麻などのドラッグ解禁、

 

ヴィーガニズム(完全菜食主義)といった

思想やムーブメントが生まれていきます。

 

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ロックもこれに後押しされる形で

野外フェスなどを通じ広がっていきます。

 

 

「ウッドストック」はその象徴的フェスであり

 

ビートルズ、ローリングストーンズ、

ジミヘンドリックスといったアーティストが出演し

 

ヒッピーたちは音楽とともに

酒を飲み、ドラッグを服用し

自然の中でフリーなラブを形成していきました。

 

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ウッドストックはそこらじゅうで

ドラッグやったり、

セックスしていたりと

 

今の価値観で見ると

恐ろしく滅茶苦茶なフェスだった

という話もあります。

 

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ビートルズに詳しい人はわかるかもしれませんが

1960年代後半に製作された楽曲は

 

明らかに東洋文化、宗教に感化されたものや

サイケドラッギーなものが増えていきます。

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こんな「ヒッピー」という

一大ムーヴメントが生み出し

今も残る言葉として

 

「ラブアンドピース」

 

というものがあります。

 

※反戦運動、フラワームーブメント等

も語るべきではあると思いますが

キリが無いのでここでは割愛します。

 

 

それにはこういった背景が

含まれているのです。

 

5.シャロンテートを殺すに至るまで、それから

 

実際のこの事件の首謀者は

「チャールズ・マンソン」という人物です。

 

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彼は「ヒッピー」の若者を集め

独自のコミュニティを作り

生活を営んでいました。

 

彼はヒッピー的思想と

ハルマゲドン思想をもとに

そしてLSDやマリファナで洗脳し

 

新たな宗教団体を形成していたのです。

 

 

彼には、常人には理解できない

カリスマ性リーダー的気質

そしてヒッピー的でない

過激な思考(ハルマゲドン思想)

を持つ人物でした。

 

※ハルマゲドンについては私自身

 あまり理解できていないので

 ここでの説明は割愛しますね。 

 

 

彼はギターで作曲をすることもできました。

夢はビートルズよりも偉大な

ミュージシャンになること。

 

 

ある時ザ・バーズのプロデューサーと

知り合いますが、チャールズはあしらわれるように

レコード制作を拒否されてしまいました。

 

 

そこからチャールズの復讐劇が始まります。

 

 

チャールズはそのプロデューサーの家を

訪れたことがあり、

場所を知っていたため

そこに信者のヒッピーたちを送り込み

 

一家全員を殺す計画を立てました。

 

 

そしてチャールズはこの事件を

黒人による無差別殺人とすることで

 

自身が信じる「人種間の最終戦争」を

加速させることを狙いとしていました。

 

 

また、資本主義物質主義の象徴的な

ハリウッドに住む人を殺すことは

 

彼らなりの反体制の表現だったのでは、

と思われます。

 

 

しかしその家は既に、そのプロデューサーではなく

ポランスキー、シャロンテート夫妻が買い取り

住んでいたのです。

 

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信者に課された使命は

「指定された家屋にいる

住人を皆殺しにすること」

 

 

もう信者にはそこにだれが住んでいるか

なんてことは関係ありませんでした。

 

 

ポランスキーは仕事で外出しており

家にはシャロンテート他友人の数名。

 

いずれもそれぞれの分野での

有名人やセレブでありました。

 

 

その全員が無残に殺され

 

妊娠していたシャロンテートの

腹部には無数の刺し傷が。

 

そして壁には

 

 

Pig

 

豚ども、という捨てセリフが

シャロンの血で書き殴られていました。

 

 

この事件は世界を震撼さました。

 

しかし真犯人を突き止められることはなく

様々な憶測が飛び交うこととなります。

 

 

事件は迷宮入りか。

 

 

そう思われた矢先、別件で

逮捕された犯人のヒッピーのうちの

ひとり(スクゥイーキー・フロム)

が、同房の囚人に

 

 

「シャロンテートを殺したのは私だ」

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と言っていたことがわかり

事態は急転しました。

 

 

そこから次々に明らかになる

事件の真相。

 

 

「ラブアンドピース」を掲げる

ヒッピー達による犯行だったため、

 

同じヒッピー達からも批判の

声が上がり、ヒッピームーヴメントは

 

急速に終息していくこととなったのです。

 

 

ハリウッドの黄金期の終息、

そしてヒッピームーヴメントの終息が

歴史の転換点になったことは言うまでもありません。

 

6.当時(1960後半~70年代初頭)のハリウッド

 

1960年代のハリウッドは、ヒッピーカルチャーに始まる

時代の流れに取り残されつつありました。

 

実際どこの映画会社も経営難に陥り

「古き良きアメリカ」なんて呼べる状態

ではなかったそうです。

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また、ハリウッド映画は撮影所ですべて

撮る、というスタイルで

 

さらに自主倫理規制コードにより

暴力的、反体制的表現、婚前恋愛や

裸、濡れ場

 

といったことを

表現することを禁止していました。

 

新進気鋭の映画監督たちは

このリアルでないハリウッドの

映画的表現ではなく

 

よりリアルで、過激な表現をするように

なっていきます。

 

 

銃の打ち合いをしても一滴の血も

流れない西部劇、ハリウッド映画よりも

 

 

リアルさを追求した銃撃戦、

人種差別の闇や

自国の経済格差をテーマとした

映画がヒットするようになりました。

 

 

ハリウッドもこれに習い

1968年にこの倫理コードを撤廃

リアルな映画を撮るようになり

 

「アメリカンニューシネマ」という

映画運動のきっかけとなりました。

 

 

当時、この新進気鋭の監督たちは

多くがヨーロッパから進出しており、

 

落ち目でもネームバリューのある

ハリウッドスター

をキャスティングする

ことが多々ありました。

↓当時落ち目だった

    クリントイーストウッド

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今作『ワンスアポンアタイム~』でも

主人公リックが正にそのような立ち位置にあります。

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食いつなぐために

落ち目のスターはヨーロッパに

出稼ぎに行っていたのです。

 

 

更に、ハリウッドが落ちぶれていた

原因はもう一つあり、

それは「高齢化」でした。

 

そこでジョージルーカスやスピルバーグといった

若手監督を起用するように

なっていき、今のハリウッドが

あるようです。

 

↓ジョーズに乗るスピルバーグ

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7.最後に

ここで予習編は以上と

させていただきます!

 

情報量は多めですが、最終的に

 

「こんな事件があったんやな~」

くらいの

感覚で鑑賞してもらって

全然大丈夫です。笑

 

ただ、予備知識があると

より面白いことは間違いないので

 

最後まで読んでいただいた方は

面白さは知らない人の倍以上

あることは間違いありません!!

 

 

現在絶賛公開中です。

 

お時間ある方は是非、、

 

 

 

【得する人、損する人】ウルフ・オブ・ウォールストリート

 

🎥ウルフ・オブ・ウォールストリート

 

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今回は2013年公開、マーティンスコセッシ監督作の

ウルフ・オブ・ウォールストリートのレビューです。

 

 

天才的株式ブローカーのぶっ飛んだ人生を描く作品です。

私が「ヤバい映画教えて!」と友人に言われると

その内の一つとしてこれを挙げる事も多いのですが

みなさんはご存知でしょうか?

 

 

今日はこの作品の「ヤバさ」をがっつり説明していきます。笑

 

 

 

 


~監督、キャスト等~

 


監督はマーティンスコセッシ

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グッドフェローズ」という伝説的ギャング映画の他様々な作品をのこしている。

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グッドフェローズと同じく、今作も

現在の主人公が過去の自分を語る、という形を取っている。

 

言うなれば前日譚なのであるが

今作は観客に何となくの結末、展開を予想させた上で

オチでそれを超えていく、という気持ちの良さ。

 

更に、シナリオ全体もジェットコースターの様に話が転がっていき

全く飽きさせることがない。

 

 

なんと、この作品約180分、3時間という長尺映画なのだが

それを感じる暇なく見終えることができるだろう。

 


今作の主人公、ジョーダンベルフォード役には

レオナルドディカプリオが。

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これぞまさに、怪演!である。

 


ダークでクレイジーな最高の演技をしています。

後半、父親との電話中にドラッグでぶっ飛んじゃうシーンは

「これマジで演技か、、、」と疑うほど

最高に気持ち悪い演技を披露しています。笑

言葉にならない言葉を吐き

地面を這いつくばるその姿は

正に廃人そのもの。

 

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ディカプリオに王子様的な

スマートで透明感のあるイメージを持っている方は

少々ショックを受けるかもしれません。

 

 

助演にはジョナ・ヒルが。

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もともとコメディー畑の俳優なのだが

演技も高い評価を受けており、

今作ではアカデミー助演男優賞にノミネートされている。

ジョナヒル演じるドニーは

主人公に悪い遊びを教える入り口。

悪の元凶なのだが、何故だか憎めない。

表面はいい奴だが、酒やドラッグが入り始めると

性根の悪さがどんどんと表に出始める。

女性蔑視的、人種差別的な罵詈雑言を

喚き散らすような最低の人物だが

ジョナヒルのコメディー力によって

その嫌味がうまく消されている。

 

クソみたいな人間なのに

クスッと笑えてしまう。

これこそがジョナヒル

パワーなのである。

 

ヒロイン役にはマーゴット・ロビー

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今作の主人公の二番目の妻、ナオミ役を演じる。

このマーゴット・ロビーが妖艶で、セクシーで、

とにかく激エロ。

主人公がこの女にドはまりするのも

わかるわ~となるほど

男なら皆納得だろう。

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〇あらすじ

 

ウォール街の証券会社で働くジョーダンベルフォード。

コカインを常用する優秀な上司に習い

ライセンスを取るも、その証券会社は間もなく倒産してしまう。

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すぐに職探しを始めるジョーダンは

妻の勧めで「株式仲買人」の仕事に就く。

 

株式仲買人とは株式ブローカー、取引代理人、または広く

投資ブローカー等々の業務をひっくるめて言う。

 

株式ブローカー業務、中でも架電の能力がピカイチの

ジョーダンは初日からデカい売り上げを出し、

以降どんどんと頭角を現していく。

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後に、知り合ったドニーとともに

ガレージを借り会社を立ち上げる。

社員として集められたのは

学も無ければ金もない

どうしようもない奴らだった。

「どんなに学が無くても

ノウハウを叩き込めば

誰でもデカい取引が出来るようになる。」

「俺がこいつらを金持ちにしてやる」

この志を基に

社員を鼓舞し教育していくジョーダン。

いつしか会社は一大企業へと成長し

初期からのオリジナルメンバーは

これまでの生活からでは考えられない程

セレブになっていた。

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彼らの営業スタイルは異常だった。

仕事への集中力を高めるために

コカインを常用し

クレイジーなまでに仕事をこなし

目標を達成すれば

社内にバンドやストリッパー、娼婦をよび

酒、ドラッグ、セックス。

狂喜乱舞のパーティー三昧。

その酔いをまたコカインで醒ます。

 

そして社員には洗脳と言っても過言ではない程の

教育を施し、コントロールしていた。

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この仕事、金、性に対する執着は

まるで獣の様であった。

ウォール街のウルフと

ジョーダンは呼ばれるように

なっていた。

 

しかしセレブで華やかな生活も

長くは続かない。

 

ドニーのとある失敗を皮切りに

どんどんと表面化する会社の実態。

 

追い詰められていくジョーダンはどうするのか。

その結末は。

 

〇株式仲買人って?

 

この言葉、あまり馴染みのない人も

多いのではないだろうか。

かく言う私もそこまでなじみのある言葉ではないのだが。

 

優良な株、将来有望な株を紹介し、その取引のうちの

数パーセントを手数料として自らの利益にする。

ざっくり言うとこんな職業である。

 

こういった事業形態のものを紹介業や仲介業

なんて言ったりもするが、

つまり、その仲介者が紹介し、出た売り上げのうちの少量を

その仲介者が得る、というもの。

皆さんの身近にあるものでいえば

バイトルなどの求人情報誌、情報サイト

じゃらんなどの宿泊等観光斡旋会社も

紹介することで利益を得ている。

 

今作でジョーダン達が扱っていた株は大きく分けて

二種類。

優良株と、ペニー株。

優良株は手数料が数パーセントしか入らないが

このペニー株はなんと手数料が50%も入ってくる。

 

このペニー株を売るためにジョーダン達は

まずディズニー、マイクロソフトやファッションハイブランドの優良株を顧客に売り

「確実に顧客に利益のでる株を売る企業だ」という信頼を築く。

そこから顧客に大量のペニー株を

「絶対に勝てる株だ」と言って売りつけ

膨大に入ってくる利益で業績を伸ばしていった。

 

ちなみにこのやり方は犯罪である。

これ以外にもジョーダン達が某企業の株を

独占したり、それで市場を操作したりと

やりたい放題だったので

悲しい末路を辿ったのだが。

 

しかし、このジョーダンベルフォードが今

何をしているのかというと

自身の経験やビジネスにおけるノウハウを商品に

セミナーや講演会、自伝書籍を出すなどしてお金を儲けている。

この映画もこの自伝書籍をもとに製作されたものだ。

 

日本でいうホリエモン橋下徹キングコング西野のような

儲け方をこの人は先にやっている。

 

お金を儲ける仕組みや手段を

自分で作っていける人間こそが

俗にいう「勝ち組」になれるのであろう。

 

〇まとめ

 

この映画でも言及されているが

「結局幸せってなんなんだ」

というのは

もう個人で決定付けるしかないのだ。

お金を儲けて、物質的に豊かになることも

お金がなくとも人として豊かであることも。

 

自分が望む未来へ一直線に進む。

どの未来を選ぶにしても

このエネルギーをもって進むことが

幸せへの第一歩ではないだろうか。

 

ただ、この映画の一番最後に映し出される

セミナーを見に来ている、搾取される側の人間たちの

何とも力のない、気の抜けた表情を見ると

 

例え物質的に豊かにならなくとも

世の中の仕組みやお金の流れ、

自分が搾取されないために

様々なものにアンテナを張っていないと

いけない、という危機感を感じざるを得ない。

 

 

といった感じで今回のレビューは以上です。

実はこの記事、一回全部消えてしまって

もう一回書き直してるんですよね。涙

一回目に書いてた記事の方が

明らかに良かったのでこれを公開するのも

心苦しいのですが…

次に進むためにも意地で完成させました。

 

この映画、超面白いです。

お時間ある方は是非!

 

 

 

【文化を守る人】 舟を編む

🎥舟を編む

 

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 今回は2013年公開の映画「舟を編む」のレビューです!

今作は日本アカデミー賞で最優秀作品賞をはじめ6部門の受賞、

他にも様々な賞を

キャストや監督、スタッフも多くの個人賞を得ています。

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監督は石井裕也

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川の底からこんにちは」他面白い作品を多数残している。

なんと満島ひかりの元夫である。  羨ましい…

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今作では史上最年少(30歳)で第86回アカデミー賞外国語映画部門日本代表作品にされた。

日本アカデミー賞では最優秀監督賞等を受賞した優秀な監督である。

 

原作は三浦しをん。「まほろ駅前多田便利軒」他様々な作品を残す。

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まほろ駅前」では実写化は今作と同じく松田龍平がキャスティングされている。

三浦しをんは独特な空気感や人物同士の関係性で

惹きつける作品が多いように思う。

その作風に松田龍平がマッチしているのだろう。

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メインキャストは

馬締光也役に松田龍平

林香具矢役に宮崎あおい

西岡正志役にオダギリジョー

他実力派俳優が名を連ねている。

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特に松田龍平の演技は素晴らしいを通り越して

えげつなさすら感じる。

キャラクターのもつ性格と松田龍平の演技プランが

非常にマッチしており、その人物としての

厚みがぐっと増している。

 

◯あらすじ

1995年

玄武書房で38年辞書一筋の編集者、荒木公平小林薫)が定年を迎えようとしていた。

荒木の仕事ぶりに惚れ込む辞書監修者の松本朋佑教授加藤剛)は引き留めようとするが、

「病気の妻を介護するため」という荒木の意志は堅い。

急遽、社内で荒木の後任探しが始まる。

めぼしい人材が見当たらない中、荒木の部下、西岡正志オダギリジョー)が

密かに社内恋愛で同棲中の三好麗美池脇千鶴)から

言語学部の院卒で変人と噂される馬締光也松田龍平)の情報を仕入れる。

名字の通り性格は生真面目だがコミュニケーション能力に著しく欠ける馬締は

社内でも浮いていた。

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一方で言葉に対する卓越したセンスを持ち合わせ、

「右」を定義せよという荒木の質問に合格。

松本が熱意を燃やす新しい辞書『大渡海『(だいとかい)』

の編纂を進める辞書編集部に異動となる。

 

以降『大渡海』の編纂を進めるなかで

人と関わるとはいったいどうゆうことか

恋をするとどんな感情になるのか

友情とは、尊敬とは

そして、言葉を紡ぎ、守るとは。

 

人として大切なことを学ぶ馬締。

 

どうしようもく流れるときの中で

成長した馬締は多くの出会いと別れのなかでいったい何を思うのか。

 

 

演技についてだが、

前述したとおり、今作は松田龍平の演技が本当に素晴らしい。

演じる馬締は何を話すにしても

「あ、、、」「あ、いえ、、」

と言葉が出ない。

猫のトラさんだけには饒舌なのだが。

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しかし、馬締の頭の中はそうではない。

彼の頭の中では、言葉が溢れ満ち満ちている。

それを相手の感情を慮り発言することができないのだ。

この頭でっかちさ、それでもって自信がなく、コミュニケーションが取れないという

社会不適合者感。

これが所作や目線の動き、声色や間、その全体に纏う空気までにも滲み出ている。

しかし、馬締は自分の意思を強く持つ人物である。

その芯の強さがその瞳から見て取れるのだ。

 

いやあ恐ろしい。とんでもないレベルの俳優さんだ。

他の俳優さんもかなりレベルの高い演技をされている。

宮崎あおいの神々しさも注目である。笑

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そして今作のタイトルでもある『舟を編む』とはどういう意味を持つか。

主人公達は「大渡海」という国語辞典を編纂しているのだが

この「大渡海」とは「(言葉の)大きな海を渡る」という意味が込められる。

「ら抜き」や「憮然」のように日々変化を遂げる日本語を解説する「今を生きる辞書」を目指すこの辞書は十年を裕に超える年数を編纂に要した、というシナリオだ。

 

言葉は、今当たり前にあなた達の目の前にある。

様々な情報を伝えるために。

 

我々は言葉を知り、学び、用いることで

人格を形成し、コミュニティを作り

日々の生活を創造しているのだ。

 

この「言葉」はつまり文化、カルチャーの根源の一部なのである。

言葉が人を、社会を、モノを、概念を

意味付けることで

それを組み合わせ創造する事が可能になる。

 

わかりやすい例で言うと、若者言葉がある。

「タピる」、「あげみざわ」、「よいちょまる」

意味不明に見えるこれらも

新たな概念を一つの言葉にすることによって

彼らのカルチャーを確立し、彼らはそれを共有することでコミュニティを形成している。

(これらは言葉と概念が相互作用的でありどちらが先か、と決定づける事は難しいが…)

 

反対にこれらの言葉を理解しない人々を排除する作用もある。

やはりこれも彼らのカルチャーを守るために必要な作用なのである。

大人達がこの言葉を理解するころには

そのカルチャーは廃れている事も多いだろう。

 

 

そして、新たに生まれる言葉があれば

消えていく言葉もある。

言葉は遥か昔に生まれ、書籍等で現存するものは

古典として研究をされてはいるが

やはりその言葉の意味、概念は完全に理解することはできず

現存していないものはもはや知ることすら許されない。

古語は言わずもがなその当時のライフスタイルやカルチャーから生まれたものであり

それを今を生きる我々には詳細まで知り得ることは難しいだろう。

 

つまりこの言葉達をまとめ守る事は

我々の歴史、文化を守る為に必要不可欠なのである。

 

 

その中で、国語辞典とは

この時代の流れにより流動的で

かつ膨大に溢れる言葉の大海原を

自身を見失わずに進むための道しるべとなるのである。

 

また国語辞典の編纂は

生まれては廃れていく言の「葉」を次々に編み修復し

大海を渡るための「舟」としての役割を担う。

 

そう、辞書編纂は「舟を編む」ことに

他ならないのである。

 

 

今作の登場人物達が如何に日本において文化的に貢献をしているか。

是非その意味を分かった上で

この作品を見ていただきたい。

 

果てしない年月がかかる辞書編纂をする人達はどの様に世の中を見ているのか。

 

そんな視点で今作を見ていただければ

何か見えるものも増えるかもしれない。

 

 

と言った感じで今回のレビューは以上です。

なんだか難しい事をツラツラと書いてしまいましたが

深く考えずとも見るだけで素敵な作品だと感じていただけると思います!

お時間ある方は是非…

 

 

 

 

 

 

 

【絶望の連鎖】セブン/SE7EN

🎥セブン/SE7EN

 

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今回はサイコサスペンスの傑作、「セブン/SE7EN」のレビューです!

今作は全米興行成績4周連続1位に輝いた大ヒット作でありかなり評価の高い作品です。

 


⚠️ネタバレを含みますので

まだご覧になっていない方で

前情報入れたくない人はブラウザバックお願い致します🙇‍♂️

 

 

 

公開は1995年。

監督はデヴィッドフィンチャー

先日レビューした「ファイトクラブ」等様々な作品を残した監督である。

今作は、前作「エイリアン3」が不振に終わり

意気消沈していたフィンチャー

これは素晴らしい脚本だ!と惚れ込み

映像化したものである。

脚本はアンドリューケヴィンウォーカー。

セブンの脚本は彼がニューヨーク在住時感じた鬱屈した感情を元に書き起こしたものである。

 


キャストは

デビッドミルズ役にブラッドピッド。

妻ミルズ役にグウィネスパルトロー。

ウィリアムサマセット役にモーガンフリーマン。等…

 


ブラッドピッドは今作では田舎町から都会に配属された新米刑事を演じる。

この刑事は若手ならではのエネルギーとパッションに溢れ、理性でなく感情で動こうとする。

その若さ、危うさを巧妙に演じ切っており

クライマックスの苦悶と激怒の入り混じった表情は映画史に残る凄まじさを感じる。

 

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グウィネスパルトローといえば、アイアンマン

トニースタークの秘書兼妻のペッパーポッツ役としても有名である。

今作もその美貌と、若干の幸薄さ…が演技のいいアクセントになっている。

 

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モーガンフリーマンは私の中ではやはり「ショーシャンクの空に」のイメージが強い。

今作では還暦間近の敏腕老人刑事を演じる。

思慮深く理性的で、その瞳はこの世への絶望に満ちている。

この役はモーガン・フリーマンのもつスキルやキャリアが無ければ

演じ切ることは難しかっただろう。

 

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雨の降り続く大都会。

退職まで残り1週間と迫ったベテラン刑事サマセットと血気盛んな新人刑事ミルズは

ある死体発見現場に急行した。

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死体は信じられないほど肥満の男であり

彼は食べ物の中に顔を埋めて死んでいた。

死因は食物の大量摂取とその状態で腹部を殴打されたことによる内臓破裂

 

状況から、何者かによって手足を拘束され、銃で脅されながら食事を強制されていたことが判明し、殺人事件と断定される。

 

サマセットは死体の胃の中から発見されたプラスチックの破片から

現場の冷蔵庫の裏に、犯人が脂で書いたと思われる「GLUTTONY(暴食)」の文字と

事件の始まりを示唆するメモを発見する。

 

次の被害者は強欲な弁護士のグールドであり

彼は高級オフィスビルの自室で血まみれになって殺されていた。

 

死体はちょうど贅肉の部分を1ポンド分切り落とされており

状況から犯人は2日かけて被害者にどこの肉を切るか選ばせていたと推定された。

 

現場には被害者の血で「GREED(強欲)」の文字が残されており

サマセットは、犯人が「七つの大罪」をモチーフにして殺人を続けていると判断する。

 

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以降毎日計画的且つ猟奇的に惨殺された死体が見つかり

その現場には同じく七つの大罪に関連するメッセージが残される。

 

サマセットの推理から一度は犯人の居場所を突き止めるものの

取り逃がす二人。

「七つ」のうち残りが後二つに迫ったところで

犯人からメッセージが送られる。

 

サマセットとミルズのみに次の死体のありかを教える。そこまで連れていけ。

 

何かある、罠だ、と分かったうえで犯人を現場に連行する二人。

そこで二人は究極の選択を迫られることになる。

 

 

 

 

今作で重要なキーワードとなる「七つの大罪」。

七つの大罪とはキリスト教カトリックにおける概念で

堕落した人間が犯すとされる“全ての罪の根源となるもの”のことだ。

カトリックでは「罪源」と呼ばれ、罪そのものというよりも、罪を誘発する悪しき習性といった方が近いだろう。

罪を罪として意識しにくい故に、神への甚だしい冒涜となるのだ。

・嫉妬(envy)

他人の幸福を妬み、他人の不幸を喜ぶ感情。

・高慢(pride)

過度に自惚れていること。美徳とされる「謙遜」の真逆の状態。

・怠惰(sloth)

元々は安息日に関わらず労働を続けることを指していたが、現在では労働を放棄して怠けていることを指す。

・憤怒(wrath)

人間の最もネガティブな感情のひとつ。怒りは理性を破壊し、魂の中に悪魔を迎え入れることだとされている。

・強欲(greed)

金銀など財産に対しての異常な物欲。聖パウロは「一切の悪事の根なり」と説いたとされる。

・肉欲(lust)

色欲、邪婬ともいう。子孫繁栄のためではなく、みだらに性的快楽に陥ることは禁忌とされる。

・暴食(gluttony)

もしくは「大食」。節制のない食事は、欲望を助長させる根源となる。

 

 

我々は日々の暮らしの中でこの七つの大罪を犯してはいないだろうか。

 

犯人はこの神への冒頭にあたるこれらの罪を犯す人々をターゲットにしていく。

 

そして最後は自身をもその罪を犯したとし

死ぬことを選ぶ。

 

その罪は嫉妬。

ミルズへの嫉妬である。

ミルズの家庭を羨み犯人は遂に取り返しのつかない犯罪を犯す。

 

 

ここでミルズは究極の選択をする。

犯人を殺すか、

犯人を生かすか。

 

犯人を殺すことは恨みを晴らし、仇を討つことができるものの

犯人の策略に全てハマることになってしまう。

しかし生かせば……

 

 

「おお!神よ!」

 

悶え、叫び、苦しみ、葛藤し、激怒するミルズが

出した結論とは…。

 

フラッシュバックする幸せ。

 

ミルズは全ての感情を捨て去り

正義を執行することを選んだ。

 

 

サマセットにはもう止めることすらできなかった。

 

 

 

サマセットはミルズとは正反対の

理性的判断のできる人間である。

様々な分野に精通し、今回は犯人が傾倒する

宗教的思想を調査し理解することで推理を進めた。

ミルズは自分に、世界に希望を見出しているものの

サマセットは反対に世界の不条理さに絶望をしている。

そしてサマセットはミルズとは反対に性悪説的な思想を待つ。

 

そのためサマセットは、犯人を調査する中で

ある種共感できる何かが見えていたのではないだろうかと感じる。

 

しかし彼自身、まだこの世には戦う価値がある、

と考えているからこそ正常に立ち振る舞うことができているのだろう。

 

 

 

例え行きつく先が絶望だとわかっていても

人は生きていかなければならないのだ。

 

 

 

さて、今作では映像技術の一つとして

「銀残し」という手法が用いられている。

 

銀残し(ぎんのこし)とは、フィルムや印画紙での現像手法の1つ。

本来の銀を取り除く処理をあえて省くことによって

フィルムや印画紙に銀を残すものである

 

この作業により映像の暗部が非常に暗くなり

画面のコントラストが強くなるので

引き締まった映像になる。

また、彩度の低い渋い色にもなる。

 

この手法は日本で生まれたものであるが

これまで世界中に広く使われた。

 

私が「銀残し」と聞いて思い出すのは

1999年TBSにて放送のドラマ「ケイゾク」である。

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このドラマはのちに「SPEC」として続編が制作された。

恐らくケイゾクはこの「セブン」の影響を大いに受けていると考えられる。

未視聴の方は是非一度見ていただきたい。

 

コントラストの強い映像に、ノイズを用いたサウンド、シリアスかつダークな雰囲気。

そしてフィンチャーお馴染みのサブリミナル。

 

「セブン」フィンチャーの魅力がこれでもか!と詰まったボリューミーな作品となっている。

 

 

と言った感じで今回のレビューは以上です!

いや〜デヴィッドフィンチャーはやっぱり面白いですね〜。

人の根底にズシっとのしかかるメッセージを残してくれる作品は見た人を豊かにさせていきますよね!

何度見てもいい映画です。

お時間ある方は是非…

【孤独な愛】ロケットマン

🎥ロケットマン

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今回8月23日を皮切りに現在絶賛公開中の「ロケットマン」のレビューです!

 

既にご覧になっている方もそうでない方も読んでいただける内容になっておりますのでご安心下さい。

 

 

 

監督はデクスター・フレッチャー。

 

そう、あの紆余曲折あった「ボヘミアンラプソディー」を完成にまで導いた

力のある監督である。

 

今回の「ロケットマン」は前作ボヘミアンラプソディーと同じく伝記映画ではあるものの

ミュージカル映画として制作されている。

 

そのため時系列的がズレている場面は多いにあるのだが、監督曰く

「そのことは知っていたが、私が注意しているのは、物事の瞬間を映画的かつ音楽的にとらえることにあります」

などと釈明し、物語の展開や演出においての細かな時系列は重視していないとの考えを示している。

 

 


今作はエルトンジョンの伝記映画であるため

そのファンとしては見過ごせない部分ではあるとは思うが

これはボヘミアンラプソディーでも同じく問題に挙げられていたもの。

 

この問題は一旦置いておいて

エルトンジョンを深く知らない一映画ファンとしてレビューをしていきたい。

 

 


キャストはエルトンジョン役にタロンエガートンが。

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キングスマンでお馴染みの彼だが、

今作では一転イケてないメガネのロッカー役を演じている。

ボヘミアンラプソディーでは歌パートは別のキャストが声を当てていたが

なんと今作ではタロンエガートン本人が全編

歌い上げている。

彼によるエルトンのパワフルな歌声の再現は見所の一つである。

 

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〜以下あらすじ〜

※全く前情報を入れたくない方は飛ばして下さい!ですが重要部分のネタバレはありません!

 


幼いレジー少年は父からも母からも愛されない孤独な少年であった。

家庭が冷え切っているのは自分のせいだ。

次第にそう考える様になっていくレジー少年。

彼には唯一ピアノの才能があった。

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王立音楽学院へ推薦入学する彼は

ピアノの才能の着実に伸ばしていくなかで

母の再婚相手の影響から

ロックンロールに目覚める。

エルヴィスプレスリーのような髪型で

ピアノをかき鳴らす。

青年になったレジーはバンドメンバーと共に黒人シンガーのバックバンドとしてスカウトされる。

そこではソウルに興味を示すレジー

 


ソウルシンガーになりたいレジーは黒人アーティストにその旨を相談すると

「自分で曲をかけ」とアドバイスされる。

 


そこから彼の作曲家、シンガーソングライター、エルトンジョンとしての人生が始まる。

天才的作詞家バーニーと共に曲を量産していく日々。

アメリカLAの有名ライブハウス、トルバドールでの鮮烈な全米デビューを皮切りに

爆発的に売り上げを伸ばすエルトン。

金銭的に、物質的には満足する彼だったが

彼はどうやっても手に入れる事のできないものがあった。

 


それは愛。

 


自分が本当に必要とされているか。

 


どれだけ有名になっても

どれだけ富豪になっても

満たされる事のない心の隙間。

 

 

 

それは彼自身の家庭環境や

セクシュアリティに起因するものであった。

 


永遠に叶う事のない愛。

永遠に受け止められる事のない愛。

 

 

 

酒とドラッグの果てに彼は何を見るのか。

 


〜あらすじは以上です〜

 

 

 

 


映画の感情を正直に言うと……

 

 

 

惜しい……平凡。      である。

 

 

 

ボヘミアンラプソディーがあまりにも素晴らしい出来であったため

期待値が跳ね上がっていたのも原因の一つである。

 


しかし…

 


ファンムービーの域を出ていないと感じる部分が多々ある。

 

 

 

まず、シナリオについては

説明不足なシーンが各所に見受けられ

人物、主にメインのキャラクターの

感情の深掘りが出来ていない。

 


エルトンジョンを知らない観客にとっては

 


彼の側に立つ、感情移入するというよりも

なんだか彼が勝手に堕ちていく様を

見せつけられているようにも感じられるだろう。

 

 

 

字幕表記についても言いたい事がある。

 


和訳、しっかり載せてくれ。

 


字幕版だと歌パートは和訳字幕が出ず

その歌が一体何を歌っているのか殆ど伝わってこない。

重要なシーンでは表記されるが。

 


これは私の予習不足だと言われても仕方ないが

多くの若い観客達はエルトンジョンを深く知らないままに観にいくだろう。

その大衆を置いてけぼりにしてはいけない。

 

 

 

何をしているのか、何を伝えたいのかしっかり解らせるのは字幕の役目だ。

 


翻訳家の怠慢でこの映画の価値はガクンと落ちている。

 

 

 

そんな調子なのだが、

タロンエガートンの役作りに関しては賞賛を送りたい。

 

エルトンジョンのだらしなさのあるボディーの再現からすきっ歯まで。

果てにはその歌声すらも再現している。

 

演技についてはラミマレック程の魅力はないものの

エルトンの堕ちていく様がよく表現されていて、その時点で十分に役目を果たしている。

 

 

 

そんな感じで、この映画は要予習!である。

エルトンジョンについて知らなければ

 


「一体なんだったんだこれは…」

 


となる可能性も否めない。

(私はある程度予習はしていたので助かった)

 

 

 

それでも、最後に流れる「I'm still standing」は

彼の波乱続きの人生をバックボーンにすることで

より厚みを増し、更に名曲となっている。

 

 

 

音楽好きの方は必見であるだろう。

 

 

 

 


といった感じで今回のレビューは以上です。

はじめてこんなに否定的なレビューをしましたが

随所で感動し泣きそうになったのも事実です。笑

大傑作ではありませんが面白い映画です。

お時間ある方は是非…

【資本主義社会に叩きつける傑作】ファイトクラブ

🎥ファイトクラブ

 

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今回は1999年公開の「ファイトクラブ」のレビューです。

 

あのデヴィッド・フィンチャー監督の代表作の一つであるとともに

問題作、衝撃作であるといえるこの作品について今回は語ります。

 

 

デヴィッド・フィンチャーといえば他にも

「セブン」ドラゴンタトゥーの女」「ベンジャミンバトン 数奇な人生」

といった作品を残した有名な監督である。

 

今作を既に観ている人には笑える小話を一つ。

 

今作のテーマは「資本主義社会へのアンチテーゼ」であるが、

制作にあたり、あの手この手のプレゼンやフェイクを駆使し

20世紀フォックス側からなんと6300万ドル、日本円にして約70億という

とんでもない予算を引き出すことに成功している。

 

資本主義を嘲笑する映画の製作費として

資本主義の権化ともいえるハリウッド・メジャーから大金をせしめた、

という制作秘話ですらこの映画の価値を底上げしている。

 

 

 

メインキャストは親日家としても有名なエドワードノートン

あの超有名俳優ブラッドピットである。

 

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エドワードノートンといえば、個人的には「ハルク」のイメージが強い。

MCU版ハルクが後にマーク・ラファロに変わってしまったときは落胆した(今やどちらも大好きだが)

 

ブラッドピットはこれまで演じてきた役の中で今回のタイラー役が

もっとの魅力的なのではと感じるほどハマっている。

セクシーで、暴力的で、狂気的で。

それなのに人を導くエネルギーに溢れている。

それはキャラクターの人間性によるものも大きいのだが。

彼の肉体も惜しみなく披露されているので

女性ファンは必見だ。

 

 

 

主人公の僕(エドワードノートン)は自動車会社に勤務し

全米を飛び回りながらリコールの調査をする平凡な会社員。

 

自分の部屋は高級な家具や食器、ハイブランドの衣服が買い揃えられ

見た目には何不自由なく生活しているように見える。

 

物質的には何不自由ない生活を送る彼だったが

精神的には落ち着かず、不眠症という大きな悩みを抱えていた。

 

仕事のために飛行機で全米を飛び回る日々。

目を覚ます度に違う場所、違う飛行機、違う乗客。

僕は自分の隣に座る乗客を「一夜限りの友人」と考え接していた。

 

 

僕は医者に不眠症を相談すると「世の中にはもっと大きな苦しみを抱える人がいる」

と言われ、がん患者の集いを紹介される(主人公は癌ではない)。

 

この集いによって一時的に不眠症は回復するものの

マーラという女性の登場で再びその症状は悪化する。

 

 

そんなある日、出張から帰ると自宅のコンドミニアムが爆発事故にあい

全てを失う僕。

 

家を失った僕は飛行機で知り合った「一夜限りの友人」だった

タイラーダーデン(ブラットピット)に救いの手を求めた。

僕とはまるで正反対の彼はユーモアと「危なさ」に溢れた人物だった。

 

バーを出た後、タイラーは僕に奇妙なお願いをする。

 

 

「力いっぱい俺を殴ってくれ。」

 

 

僕と彼は一晩中殴り合った。

殴り合いの中で、その痛みのなかで

生きていることを実感する僕。

 

それから何度も殴り合いをしていると

それに興味を示した人たちがポツポツと集まり参戦しはじめ、

次第に大きな集まりと成っていく。

 

 

そしてタイラーはこの集まりを「ファイトクラブ」と名付け

ルールを作っていった。

 

 

ルールその1、ファイトクラブのことは決して口外するな。

 

 

社会的地位に関係なく、武器も無く

素手でのタイマン。

 

ファイトクラブは、見た目の肉体の美しさでなく

純粋な「男」としての強さを競い合うものだった。

 

 

不眠を感じることもなくなり、顔は痣だらけでも充実していた僕だったが

少しづつタイラーとのすれ違いや性格に苛立ちを感じ始める。

そしてタイラーがファイトクラブのメンバーに「宿題」を

出し始めたころから、少しずつ何かがズレていく。

 

 

タイラーのもつ信念、資本主義社会はクソだ、というものが

実際に形になっていく。

 

 

果たして彼、タイラーはいったい何者であるのだろうか。

 

 

その正体が明かされたとき

まるでビルの屋上から飛び降りるかのように

まるで搭乗する飛行機が墜落していくかのように

観客はすべてが壊れ落ちていく感覚を味わうだろう。

 

 

まさに大どんでん返し。

全てが噛み合った瞬間、あなたが見ていたものはすべてが嘘になるのだ。

 

 

この映画は今社会に蔓延る常識をぶち壊し

「本当に生きるとはどういうことか」

デヴィッドフィンチャー的解釈を叩きつけられる。

お前はモノに支配されている。

いつか必ず死ぬという事を認識しろ。

 

あなたはその事を本当に気付けているだろうか…

 

 

 

この映画の特徴の一つとしてあげられるのは

あらゆる場面で張り巡らされたサブリミナル演出である。

 

タイラーの職業(ここでは映写機の切り替え)について説明するシーンがあり、

そこで「ファミリー映画にわからないくらい一瞬ポルノ映画を差し込む」

という変態的な趣味が明かされる。

 

これこそが所謂サブリミナルと言われるものだ。

 

人が感知できないスピードや、注目せずとも視界に入るところに

人に印象付けたい「何か」を入れ込み

それが視界に入っている人間の無意識化に情報を刷り込んでいく。

 

これはかつて戦時下における大衆心理の洗脳に使われた手法とも言われている。

 

コントロールされている人間は無意識化に「何か」を

刷り込まれているため、それに気付くことすらできない。

 

恐ろしく聞こえ、まるで別世界の話のように感じるかもしれないが

これはまさに今あなたの周りに起きている。

 

日々あなたが目にするテレビやラジオ、スマートフォンといった情報メディアや

新聞や雑誌、広告や教科書に至るまで

これらを作り、情報を与えている側の人間に都合よくコントロールされている可能性は

大いにあると考えてよい。

 

この記事を書いている私自身もコントロールされている人間かもしれないし

逆にコントロールしようとしている人間かもしれない。

 

 

そしてこの映画はこのサブリミナルを巧みに扱い

見ている人間に無意識に様々な情報を刷り込んでいる。

 

その代表が今作に登場するタイラーという人物についてである。

 

画面の端々に登場するタイラーに

観客は気づかぬ内にその人物像を刷り込まれ

その彼の人間性を表すもの(主に男性器等)を

無意識に印象付けられていく。

 

そう、あなたはコントロールされているのだ。

 

 

この映画は一回ではなく二回見てほしい。

二回目を見るときあなたは鳥肌の立つ映画体験ができるだろう。

まるで全く違う映画を見ているかのような感覚。

是非体験していただきたい。

 

 

といった感じで今回のレビューは以上です。

ファイトクラブ」、見たくなりましたか?笑

超おすすめ映画です。

お時間ある方は是非、、、